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広告には、ご注意を!?

2017/10/27
弁護士 黒田 紘史

 平成29年10月11日、弁護士法人アディーレ法律事務所が、東京弁護士会から業務停止2ヶ月の懲戒処分を受けました。

 アディーレ法律事務所は、日本の法律事務所として最多の86拠点を有し、所属弁護士数も日本第6位(平成29年4月時点)という、日本有数の大型法律事務所です。テレビCMなども積極的に行っていましたから、知名度では日本一の法律事務所かもしれません。

 懲戒理由は、 「過払金返還請求の着手金を今から1ヶ月間無料にする」という期間限定のキャンペーン広告を5年近く続けたことです。これが、景品表示法違反(有利誤認)に当たると判断され、消費者庁から措置命令も受けました。

 業務停止2ヶ月の懲戒処分となると、法律事務所は依頼者との間の委任契約をすべて解除する必要があります。法律事務所にとっては非常に重い処分ですが、同事務所に依頼する依頼者の方にも多大な影響があります。私が所属する大阪弁護士会でも、急遽この件専用に電話相談窓口を設けましたが、開設当初の数日間は電話が鳴り止まなかったようです。

 このように、弁護士であっても広告を出すにあたっては景品表示法など(弁護士の場合、他に「弁護士の業務広告に関する規程」などを遵守する必要があります。)に違反しないか、慎重に判断をする必要があります。

 そして、少し前にはなりますが、今年(平成29年)の年初に、広告に関して、最高裁判所で気になる判決が出ています(クロレラチラシ配布差止等請求事件(最高裁判所平成29年1月24日判決))。

 これまで、消費者契約法の定める「勧誘」には、「特定の者に向けた勧誘」だけでなく「不特定多数への広告」が含まれるか争いがあり(経団連などは強く反対していました。)、裁判例も分かれていました。そのような状況のなか、最高裁判所は、不特定多数向けであることを持って勧誘から一律に排除されるものではないとの初判断を示しました。そして、訴訟で争われた折り込みチラシについて、消費者契約法の「勧誘」にあたるとの判断をしています。

 今後は、不特定多数に向けた広告の記載内容(不実告知や不利益事実の不告知など)によっては、消費者に取消権が発生したり、消費者団体からの差止請求が認められることになります。これまで違法とはされていなかった広告手法が対象となりうるだけに、十分な注意が必要です。

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黒田 紘史

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